● ニュッサのグレゴリオス(335〜394 神学者)
「キリストによって、人間が救われるということは、どういうことなのか。
それは、人間が神とともに働き、そして、最初の人間アダムの堕罪以前の状態・すなわち恩寵に満たされ、何らの不足も不満も不安もない、そして、神とともに、あたかもその友となって暮らしていた状態・神の友となるという状態への回帰です。
まさに、神の友である以上、もはやこの世の何者をも、その心の主とする必要もない。従って、だれの手下でもないということです。
それゆえ、本当に自主的であるという状態です。」
※ もしも、アダムとエバが、原罪を犯していなかったならば ━━
聖書によりますと、主なる神による「人間創造」の以前に、悪が存在していました。
目に見えるものの創造の以前に、目に見えないもの・天使たちの創造がなされていましたよ。
彼らは、知恵に満ち・美しく・完全なものとして創造され、創造主であられる主なる神に仕え、神の栄光をあらわしていく働きについていたのでした。
そして、彼ら・天使たちの存在と働きは、一部の天使たちに罪が見い出されるまでは、完全でした。
今や「悪魔」(サタン)と言われる、力ある天使を頭(かしら)とする天使集団が、心を高ぶらせ、自分を神のようにみなし、星々のはるか上に、「自分たちの王座を設けて、いと高き方のようになろう! 私は神だ!」と言い出したのでした。
彼らは、主なる神のさばきを受け、天から落とされてしまいますが、最後の審判の日までは、この地上・この世界が、一時的な悪魔(サタン)と悪霊たちの活動の場になっています。
最初に造られた人間・アダムとエバが置かれた「エデンの園」は、地上にありましたから、主なる神から、いかにして人間を引き離そうかと、悪魔(サタン)が誘惑の手を伸ばしてきたのです。
勿論、悪魔は、全能の神の相手ではありませんから、アダムとエバが、主なる神にしっかりと結びついている限り、悪魔には、どうすることも出来ません。
以上のことが、「エデンの園」に、不可思議とも思える「善悪の知識の木」があえて植えられていて、主なる神から、
「あなたは、園のどの木からでも、思いのまま食べてよい。
しかし、善悪の知識の木からは、取って食べてはならない。それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ。」 ━━ と警告された理由です。
結果は、蛇をあやつって、しかけてきた悪魔の巧妙な誘惑に無防備になり、おいしそうだし・キレイだし・いろんなことを知って賢くなれそうだし・・・・・ 主なる神の命令に反してその実を取って、夫婦して食べ、「悪を知る者・悪を経験する者・悪を愛する者」 となってしまったのです!!
そして、神の警告通り、永遠のいのちをもって生きる者として創造されたのに、「必ず死ぬ者・罪悪に対するさばきを受ける者」 となってしまったのでした。
(「原罪」と言われます。)
創造時点では、祝福いっぱいだった人間や自然界でしたのに、事態は一変してしまいました。
女性にとって喜びだった出産は、うめきと苦しみの内に、子を産まなければならなくなりました。そして、対等だった夫と妻の関係が、夫が支配する関係になってしまいました。
土地や自然は、人の原罪のゆえに、のろわれたものとなってしまいました。
労働は苦しみとなり、必要な食べ物や収入を確保するために、汗を流し、苦しみながら、働かなければならなくなりました。
そして、ついには、死とさばきが待っている者となってしまったのです。
自然界も、創造時の姿が損なわれ、創造時点には考えられなかった、地震・津波・台風・洪水・竜巻・病虫害・弱肉強食・干ばつ・・・・・ 等々、人間の原罪のゆえに、被造物全体が、今に至るまで ともにうめき、ともに産みの苦しみをしています。
私たち人間も、原罪のゆえに、大変なことになってしまいました。
罪と悪を知り・受け入れ・愛する者となってしまった結果、罪(原罪)が、私たちに内住するものとなり、不品行・汚れ・好色・偶像礼拝・魔術・敵意・争い・そねみ・憤り・党派心・分裂・分派・ねたみ・酩酊・遊興・そういった類のものが、社会にも・個人にも影響を与え、支配するものとなってしまいました。
キリストによって人間が救われるということは、どういうことなのでしょうか。
それは、私たちが、主なる神による人間創造の、原罪を犯す以前の祝福に満たされていた状態に回帰することです。
主なる神の恵み(Grace)に満たされ、何らの不足も・不満も・不安もなかったのです。
神に似せて・神のかたちに造られた者として、主なる神とは、あたかも親しい友だちであるかのような、親密な関係だったのです。
本当に、心の自由・魂の自由を楽しむような、すばらしい状態だったのです。
キリストによって、私たちが救われる ━━ ということは、
このような、人間創造の本来の姿・祝福に満たされている状態に、回帰することなんですよ。
( 大阪海遊館にて by yasu )